読みものヽ(´∀`)

(13)『母の想い出』Fの中

 親教会にも、家屋を流された人達が避難をされていた。その人々を心から気の毒に思った父母は、できる限りの御用に立たせていただきたいと願い、当時は未だ食糧事情が悪く、農家は一年分の保有米のほかは全部供出をせねばならず、少しのご飯の中に菜っ葉とか、甘藷蔓(かんしょづる)を入れて補っている時代であった。
 また、その頃御取次を頂いて古家を壊し、かねて念願としていた新築のおかげを頂いた時であり、数名の大工さんが入り込んであり、昼食も出さねばならないので、だんだんと保有米も残り少なくなって、果たしてこの秋の刈り入れまで持つであろうかと、不安を感じていた時であったが「ままよ、先は神様がどうかしてくださる」という心になって、数俵白米にさせていただいたのを、父が兄嫁に、
 「フジさん、明朝炊く米は取ってあるか」と問うので、兄嫁が、
 「はい、明朝の分は取っております」と答えると、
 「うんそうね、それだったら白米のあるだけ全部御用に立たせていただこう」と言うて、翌朝炊く分だけ残して、全部出させていただいた。それが真に有り難い気持ちで一杯であった。
 ところが「秋まで持てまい」と思っていた保有米が、十分足らせていただいたのみでなく、一俵ほど余らせていただいたのである。
 父も、この事実を目の当りに見て、「人の助かる御用に喜んでお使いいただけば、後は神様がちゃんと立ち行くようにはして下さるものだ」と、しみじみとした面持ちで語っていた。
 だが人には、おかげに馴れるとついはじめを忘れて、神の恵みとはいいながらも涙のにじみ出るような感激が薄らぐものである。
 それまでは近所でも良質の水として評判を受けていた井戸水(井戸掘りの折、御取次を頂いて掘らせていただいたもの)が、突然真赤に濁って使い水にならなくなった。
 母は早速、その由を恩師に御取次を願い、
 「親先生、私の方では井戸水が濁りまして使いものになりませず難渋いたしております」と申し上げると、恩師は、
 「矢野さん、それは井戸水ではなくて、あんたの信心が濁っているのじゃろう」と仰せられた。
 この恩師のお言葉を頂いて、今日人並みの生活ができさせていただくことができるようになり、家族も健康で、信心のない人からも羨望の的にまでされるようになっている。まったく親先生のみ祈りの賜でありながら、最近の私はそのおかげに馴れて、おかげに腰かけてはいなかったか。あの三十三歳の大病のことを忘れておった。自分がおかげ蒙らせていただいた喜びをもって、もっともっと人を助ける御用に立たせていただくべきであったのに、いかにも信心に濁りが入っておった」と、気付かせていただいたとのことである。
 その夜、一心にお詫びを申し上げつつ、御神酒を井戸の中に注がせていただいた。
 ちょうどその夜はひどい夕立があって雷雨が激しく、嵐の一夜であった。翌朝は、昨夜の嵐も夢のようにカラッと晴れた夏の青空を拝ませていただいたが、母は朝の洗面をさせていただこうとして、「かねてが真赤に濁って使いものにならないのに、昨夜はあんな激しい夕立であったから、とても使われまい」と思いつつ、つるべを上げてみると、きれいに澄んだお水になっているのである。
 母は、「神様はこうしてまで、私の信心にむちを打ってくださり、お引き立てくださるものか」と、今更のように勿体ない恐れ多い思いがさせていただいたと物語っている。
 また、このようなこともあった。
 鳥飼(地名)の親戚から見事なホウレン草をもらった。当時は、そのような野菜は家には作っていなかったし、食糧事情の悪いときであったので、家内中たいそう喜んだが、母はどうしても自分たちで頂く気にはなれなかった。早速、安武恩師に召し上がっていただこうと思い、教会に持参させていただき、当時家では母が炊事責任者であったが、我家では家でできたフダン草をゆでて夕食のおかずにし、
 「これは今日頂いたホウレン草だよ」というと、皆それを信じて、
 「おいしい、おいしい」といいながら頂いた。
 このようにして、ただ「親先生、親奥様」と心からお慕い申し上げ、喜んでいただこうと努めさせていただいたのである。(続きへ) 

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